非労働悲劇

お金がない!ということなので水曜日は映画を見ると1000円というからには渋谷行って『ブラック・スネーク・モーン』を1000円で鑑賞して、ゼミに行って友だちから旅行の写真をもらう、というのが僕の火曜日の時点での水曜日の計画だったのだが、はっと目が覚めたら水曜日の4分の3は終わっているし、それでも人生はつづくのだから悲劇とはこういった話である。しかし僕の人生はそう簡単に悲劇では終わりはしない。アイルランドの多くの演劇がそうであるように、あるいはカウリスマキの『街のあかり』のように「人生とはトラジコメディーである」というのが僕の信条であるのでこの先の人生に楽しみなことしかないし、さっそく新木場へ向かう。
お金がない!のだから新木場で友だちと合流したあと探すのはATMがあるコンビニなのだけれども、ぱっと見た限り新木場にはコンビニが皆無で、友だちが「コンビニもねえのかよ!?」とぶち切れる。そしたら近くで煙草吸ってたおばちゃんがやってきてコンビニはねえ、ここをこう行ってと丁寧に教えてくれるものだから、この人との距離は東京じゃないね鳥取だね。ゆらゆら帝国の今日のライブは鳥取でやるようだね、とコンビニでお酒買って新木場スタジオコーストットリへの道を歩く。新木場スタジオコーストットリという響きは、ラフォーレ原宿新潟っていうあれと酷似しているなあ。
日本のロックンロールといえば曽我部恵一の次に好きなのがゆらゆら帝国となるわけでロックンロールが聞けるのは久々だなあとテンション上がってたのだけれども、彼らがライブでやってることはどう考えたってロックというよりはジャムバンドかノイズバンドのそれで、森の中の夜行性の生き物3匹についての歌のあと15分くらい同じリフでキュンキュンやり続けてて、スタジオコーストの形状もあいまって、まるで自分が7月29日のあの夜レッドマーキーROVOを見ているかのような感覚に襲われてしまって、ああこのままじゃやばいやばい気持ちよすぎるとなったところで、後ろから誰かに肩を叩かれて現実に戻されるといったくらいで危うく天国へ行ってしまうところで助かった。
最近毎日遊びすぎで自粛せねばなあと心では思いながら体は言うこと聞かなくて、意思とは関係なく「桃鉄やろーか」と口からは出てしまう。そこからとりあえず馬場の松屋で腹ごしらえして、説教されて駅前のロータリーで煙草吸ってると、かわいい後輩が彼氏連れて歩いてきて、あ、と思って顔を逸らすも見つかってというのか見つけてというのかよくわからないけれども「だいちゃん!?」と言われて裏の方へ連れてかれる。中国をちょっとの間一緒に旅してた友だちが彼女のことを好きだという話を聞いていたので、なるほど、と色々納得する。つまり今の僕の立ち位置は重要なのだな。僕はいい人なので友だちには内緒にしておこうと思うのだが、それがいいひとのすることなのだろうか本当にとか思いながら今度彼女とデートすることになった。また彼氏のいる子とデートできるぜ!死にたい☆
とりあえず夜12時に始まった桃鉄は約50年という勝負も中盤を迎えている。友だちは東京ネズミーシー(資産2000億円)をゴールドカードで購入し、勝利を揺るぎないものにしたかと思ったが、魔のハリケーンボンビーと僕のお茶目ないたずらのせいでネズミーシーは飛ばされてしまう。という風にいちいちゲームについて解説をしていくことも可能だが、その勝負は寝ずに朝10時まで続いたので長くなるからよしておこうかと思う。ただ、これだけは言わせて欲しい。

ゲームの中でも、僕が所有する、札幌ももたろファイターズは7年連続日本シリーズを制覇している、ということだけは。日ハムは本当に最高ですよね。

で、そこから寝て起きて、友だちはバイト行くというので、日仏に繰り出してクリストフ・オノレの『ラブ・ソング』を見る。オマージュというか目配せというかそんなことばっかりやってる映画で、あらこのシーンはトリュフォーのこのシーンはゴダールのとかわりとうんざりするくらいなのだけれど、最初のシーンとかジャック・ドゥミの映画を見ているようでわりと楽しくなるのはいいことだし、ルイ・ガレルというのはほんとに大好きな俳優で、街を歩いているだけであれほど画になる俳優は他にいるかなあとすら思ってしまうけれどもそれは僕が『恋人たちの失われた革命』という素晴らしい映画を念頭において考えているからで、だんだんシーンが進むに連れてルイ・ガレルを中心に3人の男女がうんぬんという話だし、しかも映画へのオマージュが凄いものだから否が応でも、僕の嫌いな『ドリーマーズ』を思いだしてしまう。「否が応でも」という単語は人生で初めて使った気がするけど、気持ちのいい単語ではないし、使い勝手も悪く、しかも使い場所も間違っている気がするのでこれからは二度と使わないようにしよう。だから『ラブ・ソング』はだんだんムカついてきて、しかも大して寝てないので次に目が覚めたときには驚くような展開になっており、へえあの人とあの人がというか、この人誰!といった感じでむしゃくしゃした。だからおもしろいのかすらわからないまま終わってしまったのだけれども、目が覚めた後の10分くらいはたいそう楽しめたので、きっとおもしろい映画だったのだろうなあ残念だ。
明日からはたいそうまた色々とイベントが詰まっていて忙しいなあけど楽しみだなあと思うのだけれどもいま友だちから「明日合コンおいでよ」と言われた。ぜ。