パーティーのあと、憂鬱の自覚

パーティーが終わった。僕の目の前のテーブルの上には鍋やコンロや食べ残しの皿や酒や、とにかく僕の気分を憂鬱にさせる雑多なものが生息する。さっき只一度立ち上がったときに流しを見たら洗われていない食器が積まれている。パーティーのあと、友だちは帰ってしまったし、同居人のような方はひとりは寝たし、もうひとりは飲み会に行ってしまった。頭が痛すぎて重い。とにかく寒気もするのでこたつから出たくない。僕はパソコンを開く。
間違いなくパーティーは超がつくほど楽しいので、みんなで豆乳鍋とあと一昨日おかんにレシピ教えてもらったクリスマスチキン作ってピエール・ルジョンドルとかいうシャンパンをあけて、メリークリスマス!とクラッカーなんて鳴らしたりで笑顔はこうして好きな人たちとテーブルを囲むだけで作られるのだ。クラッカー思ったより音大きくてみんながびっくりしてシャンパンも栓抜く時の音がすごくて友だちはキャッとかいいながら耳ふさいだりしてて笑う。鍋は友だち2人に任せっきりで、僕は終始クリスマスチキンを作ってこれは鶏むね肉と氷砂糖とお酒と醤油とゆで卵で簡単に作れておいしいのでいまの季節にぴったりだ。あとテーブルの上には同居人が昨夜のパーティーで作ってくれたシチューとかぼちゃスープと、持ち帰ってきてくれた中華街聘珍楼の焼きそばとかが並んでわりと豪勢な食事となった。聘珍楼の焼きそばとかふつうに食べてたけど実は2500円とかするらしくて食べ終わった後知って恐縮した。北京ダックとかトリュフは2万円らしく僕はそんな高い料理を食べたことがないので想像もつかないのだけどミシュランとか焚書しようと思う。とかいって3年後くらいには「ここ三ツ星でおいしいんだよね」とか言ってそうで怖い。というかそんなはずは多分ないけど、たまに怖い。ところで何が一番嬉しかったって、僕が呼んだ友だち2人と、初対面の同居人が本当に楽しそうに話していたことでわ、これはとか思って嬉しい。
だがこういう嬉しい気持ちは持続しないし、とにかくいまは憂鬱だ。食器どうしよう。僕はずるい。あんなに楽しかったのにいまは楽しくない。ちょっと好きだった子から電話がかかってきたが頭が痛いので楽しくおしゃべりできない。さかなを聞いている。ポコペンの声でちょっと僕の憂鬱は晴れてきた。僕は水曜の夜まで毎日パーティーの予定があって、木曜はなくてまた金曜土曜日曜とパーティーなのですごく楽しみではあるのだが、こうした憂鬱な気分をあと何度味わえばいいのかと思うとうんざりする。昨日も大学の友だちとLONDON NITEにはじめて行ったのだが、終わりとかはほんとうに楽しくなくなってしまった。クラブに入った、だんだんDJの音が聞こえてくる、そういった時間はほんと至福でこのために僕はクラブに通うのだ。チャージ6000円で、ドリンク代含めて入る時に6500円払ったのだが、これは僕のクラブ史上最高値で、だけどこの日はいっぱいバンドが出たのだがそのいちばん最初に出てきたSUPER BABY FACEというラモーンズみたいなガールズバンドが一曲目を奏で出した瞬間に僕は友だちに「6500円払った価値があったわ」と口ずさんでいたくらいだ。昨日は一夜で1万円を消費する覚悟で飲んで、そしたら自分でも思った以上に自然と女の子に話しかけたりできて、人生初ナンパというものを経験する。もてる友だちはこないだ遊んだとき、えクラブってナンパ以外何しにいくの?とおっしゃってて驚いたのだが、僕にもその言葉の真意が少しずつ見えてきた。あとバンドはTHE STRIKES、THE BAWDIES、MARK SHOW、ZOOT 16、CUBISMO GRAFICO FIVEあたりが出てた。友だちに行こうと誘われてyoutubeで見る前は知らないバンドばかりだったのでスペルとか間違ってるかもしれないけど間違ってるといえ直す気もないし直さないだろう。DJはクラッシュとかラモーンズとかピペッツかけてくれたので、あとはKINKSの『THIS TIME TOMORROW』さえかけてくれれば僕は大貫憲章に屈服する形となるだろう。僕が、いや僕らがクラブに求めているものはそれだけだ。あの映画のように、人生のように踊りたいのだ。
飲み会から帰ってきた友だちと話したら僕の憂鬱は果たして消える。まったく僕はずるい人間だ。この憂鬱はきっとバイトが終わってしまったことに起因するのだろう。さて食器を