女たちよ!

「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない。それより多くもないし、少なくもない」


といきなり村上春樹の引用からはじめてみるわけだが、どうだろうか皆様お元気だろうか。最近は家でパソコンをつけることすら週に1度あるかないかといった生活なのだが、久々にアンテナとか見てみても僕が熱心に見ていきたい数少ない日記の半分くらいは更新を止められてしまっているのでわりと切ない。ところで僕はハルキ好きな人でも何でもないし、むしろハルキとか一二冊しか読んだことないような類の人間なのだが、この一節はなんて重要そうな意味を持つような言葉であろうか。
「意味を持つ」とは何だろうか?何か「私」を変えてしまうような、というものだろうか。だとすれば僕にとって彼女とはそういった存在であったのだろうか。「好きじゃなくなった」と突然言われ別れる数時間前に六本木の青山ブックセンターで手に取った橋本徹の『公園通りみぎひだり』で冒頭の一節が書かれていた。
意味を持つ女。たとえばどうだろうか。そのひとりは結婚を決める女ではないだろうか。友だちから聞いたある夫婦の話がある。ある夫婦の妻の方は僕の知り合いであるのだが、彼女はある日妊娠に気付いた。まだ22で就職を控えていた。彼女は未来の夫を呼び出しそのことを告げる。深夜のファミレスで2人は話し合う。これからどうするべきか。選択肢はきっと2つだろう。「産む=結婚する」か「堕ろす」か。まだ若い2人が後者の選択をとったからと言え責める人はいないだろう。ただ自身たちが未来において当時の選択を責めることはあっても。彼女たちはファミレスで(おそらく珈琲かドリンクバーでも頼みながら)結婚し2人の子どもを育てることのメリットとデメリットを並び挙げ、メリットの方がどうにも魅力的だったから結婚を決めたという。2人でメリットを挙げているうちに「それって楽しそうじゃん!」と思ったと言う。休職を選んだ若い妻と、映画を作ることが夢の若い夫。生活はきっと苦しいだろう。もしかしたらその選択を後悔することも何度もあるだろう。ただその話し合いを経て、お互いこの相手とならばと信じ合った2人ならば間違いなく意味を持つ相手だろう。
ハルキの言葉が正しいのならば、僕もこれから複数の意味を持つ女と出会うだろう。それがとても楽しみで不安だ。僕は言った。また会おうと。彼女はうん、と答える。だが僕は二度と彼女と会うことはないかもしれない。なぜなら彼女はこう続けたからだ。もし会っても好きだとは言わないで、と。僕にそんな自信はない。たぶんずっと。だから彼女とは会わないかもしれない。ただそれだけの話だ。ただある男が誕生日の夜に思ったことだ。何人もの友だちや大事な人たちにおめでとうと言われ大変に幸せを思ったものだが、一番その言葉をもらいたかった人からの言葉はなかった。そんなある男の悲しい話だ。


(追記)妹からもらったケーキとギャルソンのTシャツはすごく嬉しかった。あと同じく『公園通りみぎひだり』で橋本さんが『友よ映画よ』に変わる僕の人生の一冊と挙げている伊丹十三の『女たちよ!』がおもしろいよ。あと南Q太の『夢の温度』とやまだないとの『ヤング・アンド・ティアーズ』とおかざき真理の『サプリ』を1日で読み返し泣き続けました。最近聴いてる曲はサヨナラCOLORサニーデイサービスのNOW、忘れてしまおうとmadlib高木正勝と向井のSI・GE・KIとか完全に病んでると思う。